
Q1.世界で最も緑地面積が増えている&減っている国はどこ?
まずは前回授業の林業の確認から。問いについて、2分時間を取るので周りと話をしてみてください。
(時間が経ったあと数人にあてる)最も緑地面積が減っているのはブラジルやインドネシア、最も緑地面積が増加しているのは中国ですね。中国は人口もすさまじいから、木材需要も相当でしょう。なんとなく中国と言えば森林伐採など環境問題を引き起こしがちなイメージがあるけれど、数値を見れば保全にも取り組んでいると言える。まぁでもそれ以前に伐採しすぎて、「増加率」という点では大きく出やすい可能性もあることは気にする必要はあるけどね。https://watashinomori.jp/study/basic_01.html
ただし、中国は緑化といっても力業に出ていることがニュースになった事もある。ペンキで塗ったらしい。2007年だそうで、こちらは緑地面積に含まれているのか…?https://www.recordchina.co.jp/b45112-s0-c30-d0000.html
Q2.ロボット作品の登場時期を、古い順に並べてみよう。
さて今回からは鉱業、資源やエネルギーの話です。これまで地形や気候、そして農林水産業をやってきました。すべての活動の大本となる地球、そして第一次産業を学び、ここからはそれらを加工する第二次産業に変わります。まぁ鉱業は統計によっては第一次に含まれる場合もあるけど…細かい話は気にしなくてよいです。さて、この単元に入る前にこのスライドを見てください。

ここにはロボット…というと微妙なメンツも居ますが、人外…といってもまた微妙なメンツも居ますね、人造人間も居るので。とにかく工業製品が並んでいます。これら創作物を、誕生順に並べるとどうなると思いますか?4分時間を取りますので相談して考えてみてください。(2分後くらい)ヒントを出します。古い順の年代が1945年、1951年、1969年、1979年、1987年、1995年です。
(時間経過後、数人にあてる)では正解を発表します。(画像参照)古い順にトーマス、アトム、ドラえもん、ガンダム、ロックマン、エヴァンゲリオンの順になります。実はトーマスが一番古いんだな。トーマス、アトム、ドラえもんは絵本や漫画、ロックマンはゲーム、エヴァンゲリオンはアニメが初出ですね。合っていた人は居ましたか?
Q3.ロボットたちの動力源は何か?
では、今並べたロボットたち、もちろん人間ではないので食事はしない。まぁどら焼き食べるのも居ますが…動力源は食物ではないですね。何によって動いているのか?その動力源を考えてみてください。なんとなく考えられたらタブレットを使って調べてみてもよいです。4分時間をとります。
(時間経過後、数人にあてる)ではこちらも正解を発表します。

(画像参照)トーマスは機関車なので石炭、アトム・ドラえもん・ガンダムは核、ロックマンはソーラー、エヴァンゲリオンは電力で動いています。アトムは名前そのまま、断面図なんかも調べれば出てきますが内部に小型核融合炉が入っています。あまり知られていませんがお尻に銃が内蔵されているんですよね…撃っている相手が見えない気がするんですけど大丈夫なんですかね。(https://tezukaosamu.net/special/atom/)ドラえもんはどら焼きをよく食べますが、実は設定上そのすべてを原子力エネルギーに変えているそうです。こちらも断面図を見てもらえればと思います。(https://dora-world.com/sp/tencomi_detective/2018kiteretsu/201801_kiteretsu_vol001.html)アトムもドラえもんも内部に原子炉を持っているとなると…転んだだけでも大変、劇場版なんか冒険しすぎです。ちなみにドラえもんはトイレに入る描写もあるそうです、何を出しているんでしょうか。昔この話をした時、生徒が「どら焼き一つがすべて原子力エネルギーに換算されるとしたらどれくらいの発電量になるか」を計算して教えてくれました。どら焼き一つが60gだとして、ウラン235と同じ発電効率で200万kWhくらい、大体原子力発電所2基分くらいの発電が可能なようです。暇なんですかね。日本の年間電力はいくつくらいだろうか?データブックp89に載っているので見てみてください。大体1兆kWhくらいなので、ドラえもんで日本の電力を支えるとすると大体どら焼きが50万個くらい必要になるのかな。ドラえもんを100体用意して一日10個ずつどら焼き渡せばいけますかね。動力の話であればエヴァンゲリオンは状況によっては電気が不要になったりします。一番揉めるのはガンダムですね。ミノフスキー粒子が出てくると手に負えないので考えないものとします。余談ですがトーマスはあれだけ移動の自由がないと辛いでしょうね…昔インターネットで「いいよなトーマスは、進路が決まってて」というのがありました。台風バージョンもあります。進路が決まらないつらさがわかる高2には響くんじゃないですか。トーマスは連結するときどうするのかね、次の駅まで至近距離に顔がある状態なのかな。つらいね。
さてロボットの話に戻すと、実はこの順は資源やエネルギー源の変化と大きな関係があると言えます。まずはトーマス。トーマスは動力源は石炭ですね。そもそもトーマスはどこの国で産まれた作品なんでしょうか?1分時間を取るので考えてください。(時間経過後、生徒にあてる)答えはイギリスです。なぜイギリスなんだろうか?それは世界で最初に産業革命が起こり、石炭と機関車が初めて人類史に登場した国だからでしょうね。一方でまたロボットアニメの年表に戻ってみてみると、その後原子力で動くロボットが続きます。アトムとドラえもんの登場時期の間、1963年には茨城県の東海村で商用原子力発電所が稼働を開始、資源を持たない日本にとって原子力は夢のエネルギーだったんでしょう。でもその後、ロックマンを境に原子力を動力源としたロボットは鳴りを潜めます。なぜなのでしょうか?ロックマンなんて原子力で動いてもよさそうだけどね。ちょっと1分取るのでこちらも考えてみて下さい。
(時間経過後、生徒にあてる)。夢のエネルギーとして持て囃された原子力が登場しなくなった、という事は夢のエネルギーではなかった事が明らかになった、という事です。1979年、アメリカで大規模な原子力事故が起きました。スリーマイル島での原子力事故です。この事故で原子力の恐ろしさが世界に広がります。この事故が発生したのが3月、ガンダムが4月放映開始です。おそらくですが設定の変更が間に合わなかったのかな。そして1986年、世界で最も大きい被害をもたらした原子力災害の一つ、チェルノブイリ原子力発電所の事故が起こりました。この場所、現在ではどこの国にあるかわかりますか?2分時間を取るので地図帳から探してみて下さい。(時間経過後、生徒にあてる)現在のウクライナ、キーウの北部にありますね。ロシアによるウクライナ侵攻の影響から、首都の表記がロシア語のキエフからウクライナ語のキーウへと変わりました。チェルノブイリもチョルノービリに変わってますね。首都から近いですね、大丈夫なんでしょうか。
事故当時この地域はソビエト連邦の一部でした。発電所の事故が発生した時、ソ連はこの事実を隠蔽しようとしたんですね。でも周辺国の観測所がどうも線量がおかしいと告発、何度かのやり取りの末事故を認めたそうです。現在でも近づく事も出来ないこの地域は、国際原子力・放射線事象評価尺度で最も被害度合いが高いレベル7となっています。ちなみにレベル7に該当する地域は世界に2か所しかありません。他はどこかわかりますか?答えは福島第一原発です。先程「キーウとチェルノブイリ近いね」と言いました。東京と福島は?世界地図で見ると近いですね。福島とチェルノブイリでは、厳密には放射能の値は10分の1程度だと言われていますが、先程皆さんがチェルノブイリとキーウの距離感で感じた事が、世界での東京の評価かも知れません。
ロボットの話に戻すと、ガンダムとロックマンの間では「動力源が原子力ですよ」とは言いづらくなる事情があったという事です。まぁ実際にインタビュー記事等があったわけではないのですが…ロックマンのライバルキャラであるブルースというキャラクターが改造の末に原子力エネルギーで動くようになった設定からも、メインキャラクターに「原子力」と言いづらい世界ではあったと思います。
主要エネルギーの変遷と一次・二次エネルギー
さて、ここまでアニメなどを題材にエネルギーの変化を見てきました。地理で学ぶ事は、実は身近なアニメの設定にも大きな影響があったりすると言えるわけです。それでは地理の内容として押さえておきましょう。18世紀に入り、世界は産業革命から石炭を利用した機械化が進んでいきます。その後2度の世界大戦を経て、より運びやすく熱量が高い石油がエネルギー源の主役となっていきます。1963年には石油が石炭の使用量を上回りました、これをエネルギー革命と呼びます。この3年後、1966年には日本に初めての原子力発電所が茨城県東海村で稼働を開始します。ちょうどドラえもんなどの時期ですね。その後1979年にアメリカのスリーマイル島での原子力事故、そして1986年のチェルノブイリ原発事故、2011年には福島第一原子力発電所の事故が発生し原子力発電の危険性が広く認められ、現在では太陽光や風力に代表される再生可能エネルギーに重点が置かれるようになってきました。
エネルギー源が石炭から再生可能エネルギーへと多様化してきたわけですが、石炭は使用されなくなったのでしょうか?データブックp82の④を見てください。現在の1次エネルギー生産比率を見ると、2020年の値では石炭27%、石油29.8%、天然ガス23.6%となっています。世界全体でみると石油と同じくらい利用されているエネルギー源だと言えます。ここで一次エネルギーと出ました。一次エネルギーとは天然のままの物資を、姿を変えずそのまま利用するエネルギーの事を指します。例えば薪。そのままでも使えますがもっと燃えるものへと変化させた方が使い勝手が良くなります。皆さんもバーベキューの時は薪からはいかないですよね?木炭として利用すると不純物としての煙が少なくなります。この加工したエネルギー源を二次エネルギーと言います。石炭であれば蒸し焼きにして、炭素含有率を上げます。これ何と呼ぶかわかりますか?コークスと呼ばれます。コークスは燃料にも使いますが、特に鉄鋼の生産の時にも利用されます。鉄鉱石内の酸化鉄、Fe0を還元するための還元剤として利用されます。FeとCO2にするわけですね。原油は精製して石油製品へと姿を変えます。原油からはガソリン、重油、軽油など、これらはすべて石油です。最後に残るものがアスファルト、道路の表面の黒い部分になります。アスファルトは見た目は固いですが分類上は非常に粘り気が高い液体だそうです。どれくらい粘り気が高いかというと、一滴垂れるまで約10年。これはオーストラリアの大学が1927年から現在も続けている実験で明らかになっていて、この実験は最も長く行われている実験としてギネスブックにも載っています。固体のようで実は液体、というのはガラスもそうらしいですね。2次エネルギーの話に戻します。天然ガスは気体状態のままで運ぶと体積が大きすぎるので、約-160℃まで冷却し液体化させて運びます。そうすれば体積は1/600にまで圧縮出来るんですね。この液状化させたガスをLNG、Liquefied Natural Gas、日本語で液化天然ガスと呼びます。使用するときは常温にして気体に戻し各家庭に送ったりします。余談ですが、ガスを嗅ぐと変な匂いがしますね。あれは天然の匂いではなく匂い付けしているそうです。実際のガスは無色無臭、それでも危険を察知させるために、わざわざ「変な」匂いにしているそうです。細かい工夫ですね。
今回は日本人にも身近なロボットアニメから、世界のエネルギー資源の変遷について見ていきました。次回以降では、各エネルギー資源について細かく見ていきましょう。
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